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世界に誇る景観を守るために-三保松原景観改善事業に込めた想い-

2026年9月28日

皆さんは日本三大松原の一つである、「三保松原」に行かれたことはありますか?三保松原は、「海岸の松原越しに富士山を望む風致の優れた場所」として日本初の名勝に指定されています。また、世界文化遺産である富士山の価値を構成する資産(構成資産/構成要素)でもあり、多くの観光客が訪れます。

今回は、その三保松原の美しい景観を守るために静岡県が行っている「三保松原景観改善事業」について取材しました。

目次

1.事業の実施背景と目的 
2.今後5年間の事業構想
3.事業に関わる河川企画課の職員の想い(インタビュー)
4.取材して思ったこと
5.おわりに

1.事業の実施背景と目的

この事業が始まったきっかけは、三保松原が世界文化遺産に登録される際の事前調査に遡ります。世界遺産委員会への報告のため現地視察に訪れたICOMOS(国際記念物遺跡会議)から海岸に設置されている消波ブロックが「景観上好ましくない」として指摘されました。最終的に世界遺産への登録は果たされたものの、県はICOMOSからの指摘を重く受け止め、従来の砂浜を防護する取り組みから、一歩進めた防護と景観を高い次元で両立する本格的な景観対策に取り組んでいくこととなりました。

この事業の目的は、こうした背景を踏まえ、三保松原が誇る「美しい景観の回復」と、高潮や侵食から海岸を守る「海岸保全」の両立を実現することにあります。

2.今後5年間の事業構想

この事業では、短期・中期・長期対策と段階的に進めています。

今年度は、本格的な設計や工事に入る前に、どのような方法や条件で施設を整備するのがよいかを検討する「検討会」を行います。大学教授などの有識者の意見も聞きながら、海岸を守る機能と美しい景観をどのように両立させるのかを検討していきます。

2年目には、工事を開始するための詳細設計や工事業者選定に向けた入札手続きを進めます。

そして3年目には、受注した事業者が実際に工事を始めます。具体的には、構造物の基礎を工場で製作する、函(かん)体(たい)(四角い箱状の構造物)を陸上で製作するなど、現場に設置するための準備を行います。

▲製作中の函体

そして、4年目以降は、製造した構造物を三保松原の海岸に設置する工事を進めます。こうした取り組みを段階的に進めることで、海岸を守る機能を確保しながら、富士山を望む三保松原の美しい景観の改善を目指します。

▲設置中の函体

以下は、消波ブロックの撤去前後の写真です。

▲消波ブロック撤去前の様子(河川企画課提供)H25.12
▲突堤を設置し消波ブロックを一部撤去した様子(河川企画課提供)R8.1
▲2号新堤(南)設置前の様子(河川企画課提供)R7.10
▲2号新堤(南)設置後の様子(河川企画課提供)R8.7

撤去前は、白い消波ブロックが景観を邪魔しており、好ましいとは言えない状態でした。消波ブロックの機能を代替する突堤(※)を設置し、消波ブロックの撤去により、富士山を望む景観を遮るものがなくなり、美しい自然をより本来の姿のまま見ることができるようになります。

(※)突堤…設置することで海岸線に沿って移動する砂をその場にとどめる効果が期待できるもの。水面上に飛び出す部分が多い消波堤とは異なり、海の中に設置するため景観への影響を最小限にできる。

3.事業に関わる河川企画課の職員の想い(インタビュー)

この事業に携わる静岡県交通基盤部河川砂防局河川企画課の岩崎さん、山梨さんにお話を伺いました。

Q景観を守る取り組みを進めることで、防災機能が弱まる懸念はないのですか?

岩崎さん:防災機能を損なうことがあってはいけないと考えています。そのため、安全性を確保した上で、景観の改善をどこまで実現できるかを検討してきました。現在ある防災機能を維持しながら、景観の改善をはかることを基本方針として、事業を進めています。

Q工事が始まる前に住民や観光客から景観に関する意見はありましたか?

岩崎さん:私が把握している範囲では、大きな不満の声はありませんでした。しかし、世界遺産に登録されることをきっかけに、この場所がより多くの人の目に触れ注目されることから、世界遺産にふさわしい場所にしていくため、この事業につながりました。

Q事業を進める中で、住民や専門家等から反対や意見はありましたか?

岩崎さん:大きな反対はありませんでしたが、どのような対策を行うかについては、さまざまな意見がありました。そこで、大学教授などの有識者で構成する委員会で、議論を重ね、こうした過程を経て、現在の基本方針をまとめることができました。

Q事業を立ち上げた際、まずどのような調査を行ったのですか?

岩崎さん:職員が二人一組でGPSを持ちながら海岸を歩き、場所による消波堤の見え方を調査しました。まずは現状をしっかり把握し、事前調査や検討に時間をかけたことも、この事業の一つの特徴です。

Q事業に携わることで、三保松原に対する見方は変わりましたか?

岩崎さん:これまで以上に深く考えるようになりました。私はこの事業が始まる前から三保松原の海岸に関わり、景観にも配慮した海岸保全に取り組んできましたが、この事業を通じて、海岸を守ることと景観を守ることを両立させる重要性を、改めて感じています。

山梨さん:県外から多くの観光客が三保松原を訪れるために静岡に来ていることに驚きました。この部署に来てから、静岡県が海岸を守りながら景観の改善にも取り組んできたことを知りました。こうした取り組みをより多くの方に知ってもらえるよう、事業の情報発信にも力を入れていきたいと考えています。

Q三保松原での工事中の写真のフォトコンテストがあるとお聞きしました。詳しくお教えいただきたいです。

山梨さん:応募いただいた写真を、景観の専門家や職員、工事会社の方々が審査し、優秀作品を選定する取り組みを行いました。一般的な風景の写真だけではなく、工事中だからこそ見ることができる景観をコンセプトにしたフォトコンテストです。今後もSNSを活用しながら、こうした情報発信に取り組んでいきたいと思っています。

▲取材の様子

4.取材して思ったこと

三保松原が世界文化遺産の構成資産となる過程では、ICOMOSから海岸の構造物が景観に与える影響について指摘がありました。それをきっかけに、静岡県では、海岸を災害から守る機能を維持しながら、美しい景観を回復させるための取組が進められてきました。

取材前の私は、「景観を良くすること」と「海岸を守ること」を別々のものとして考えていました。しかし、職員の皆さんの話を聞き、どちらか一方を優先するのではなく、両立させるために長い時間をかけて検討を重ねていることが分かりました。

今回の取材を通じて、三保松原でこれほどまでに大規模な取り組みが行われていることを初めて知りました。

特に印象に残ったのは、担当する職員が替わっても、「何のためにこの事業を行うのか」という考え方のバトンが引き継がれており、一つ一つ段階を積み重ね、10年以上にわたる挑戦を支え続けていることです。

今回の取材をきっかけに、私自身も三保松原を訪れたときには、富士山や松原の美しさだけでなく、その景観と海岸がどのように守られているのかにも注目してみたいと思いました。

5.おわりに

三保松原では、今後も景観と海岸保全の両立を目指した取り組みが続いていきます。

令和11(2029)年の冬頃からは新たな工事も予定されており、普段は見ることのできない、美しい景観と建設機械や巨大な重機による海岸工事のミスマッチな景観を間近で見ることができ、この時だけの景観を楽しむことができます。

三保松原を訪れる際には、富士山と三保松原が織りなす景色を楽しむとともに、その美しい景観を将来に残すための取り組みにも、ぜひ目を向けてみてください。

工事の状況などは、静岡県のホームページやライブカメラなどで確認できます。最新情報を確認してからお出かけください!

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・富士山の眺望を妨げる消波堤を撤去! 海岸保全との両立を果たす静岡県の挑戦 | 土木学会 2024年度会長プロジェクト 土木学会の風景を描くプロジェクト

・景観への配慮 – 「羽衣の松」と「三保松原」清水海岸ポータルサイト

・富士山と三保松原と起重機船デジタルフォトコンテストの結果発表 – 「羽衣の松」と「三保松原」清水海岸ポータルサイト

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