フカボリ
実は今、固形茶がアツい!企画展「固形茶からみるお茶の世界」
2026年9月30日
皆さん、こんにちは!しずおかメディアチャンネル学生特派員の天野です。
静岡県島田市にある「ふじのくに茶の都ミュージアム」では、10月19日まで企画展「固形茶からみるお茶の世界」が開催されています。
静岡県は「お茶」の産地として知られ、私たちにとって身近な存在です。
お茶といえば、急須で入れる「葉茶(リーフティー)」というイメージが強く、長い間親しまれてきました。 しかし、世界を見渡してみると、茶葉を圧縮して固めた「固形茶」という形態のお茶も広く親しまれています。 固形茶の歴史は非常に古く、そこには私たちの知らない奥深い世界が広がっています。
今回は、実際に企画展に参加し、担当の柴本さんや参加者の方へのインタビューやプーアル茶を味わった体験を通して感じた、固形茶の魅力をお届けします。
目次
1.固形茶の歴史と魅力とは
2.企画展「固形茶からみるお茶の世界」の魅力
3.固形茶を体験!その味わいとは?
4.参加者にインタビュー
5.まとめ
6.次回の企画展「文人茶と静岡県で活躍する煎茶流派」
1.固形茶の歴史と魅力とは
「固形茶(緊圧茶)」とは、茶葉を圧縮成形して固めたお茶のことで、茶の種類によってその原料や製造方法はさまざまです。 私たちが普段、飲んでいる葉茶とは異なり、固形茶の歴史は今から1200年以上前の中国・唐代にまで遡ります。 760年頃に書かれたお茶の専門書『茶経』には、すでに固形状のお茶の製法や喫茶法が記されており、企画展にはその複製も展示されています。
では、なぜお茶を固める必要があったのでしょうか。
その理由は、同じ時代に始まった「茶馬交易」にあります。 お茶と馬を交換するこの交易では、茶の産地から消費地までの長期間にわたる過酷な運搬や保存に耐えるため、固形茶が用いられたのです。
明代以降は葉茶が主流となりましたが、固形茶の文化が途絶えることはなく、現在でも中国の雲南省、四川省、湖北省、湖南省、広西チワン族自治区などで生産が続けられています。 その形も非常に多様で、円盤状に平たく圧縮された「餅茶」や長方形や正方形のレンガ状に固めた「磚茶」、お椀形の「沱茶」などがあり、企画展では、これらの多様な固形茶と喫茶道具を通じてお茶の世界を紹介しています。
また、企画展の担当である柴本さんがおすすめする固形茶は「プーアル茶」とのことです。 プーアル茶の製法は特殊で、原料に晒青緑茶(釜でいってもんで天日干し乾燥させた緑茶)を使用します。プーアル茶は、日本人にもなじみやすく、来場者の方にも人気のお茶だそうです。
固形状のプーアル茶の大きな魅力は、時間をかけて育てる面白さにあります。 プーアル茶には「生茶」と「熟茶」があります。「生茶」は出来立ては緑茶のように苦みが強い味ですが、年を重ねるごとに味わいが変化し、まろやかになります。「熟茶」は微生物の力を借りて発酵させ、短期間で熟成を進めるため、すぐにまろやかな風味を味わえます。 また、10年以上の長期保存が可能なことも特徴です。
このような固形茶は、実は日本でも手に入りやすく、東京などの中国茶専門店でも入手可能とのことです。 ご自宅でゆっくりと熟成を楽しみながら味わうことができます。
2.企画展「固形茶からみるお茶の世界」の魅力

▲企画展「固形茶からみるお茶の世界」
今回の企画展は「固形茶」に焦点を当てています。葉茶が主流の現代で、なぜあえて固形茶に着目したのでしょうか。そこには固形茶にしかない製法や歴史、そして奥深さに理由があるようです。
企画展を実施するにあたり、担当の方々はかなり苦労されたそうです。 日本国内には固形茶に関する文献が少なく、「固形茶とは何か」という定義から製法に至るまで、一から調査・整理する必要がありました。 さらに、中国茶の知識がある方から全く知らない方まで、幅広い層に楽しんでもらえるような展示内容を考えることや、分かりやすい解説文を作ることも大変だったそうです。
企画展は、同ミュージアム所蔵の茶書や「百両茶」をはじめ、袋井市茶文化資料館所蔵の「人頭茶」やモンゴルの喫茶道具などの歴史を感じられるものが約100点展示されています。 SNS映えするようなインパクトのある展示もありますので、ぜひ会場で探してみてください。
3.固形茶を体験!その味わいとは?
企画展には、固形茶の香りを体験できるブースが設置されており、「見て」楽しむだけではなく、「香り」と「味わい」も楽しむことができます。実際に、私も柴本さんがおすすめする「プーアル茶」を体験してきました。同じプーアル茶でも「生茶」と「熟茶」では、香りのまろやかさが異なり、生茶は「まさに自然の香りだ」という感想を持ちました!

また、企画展とは別に関連プログラムとして、博物館2階「世界のお茶体験」にて、プーアル茶の体験講座が開催されていました(入館料とは別料金)。
体験講座では、エデュケーター(ふじのくに茶の都ミュージアムのスタッフ)の方が目の前で固形茶の状態からプーアル茶を入れてくれました。全部で四煎(お茶を入れる回数)楽しむことができました。
私が、この講座で一番驚いたことは、「入れられたお茶の変化」です。葉茶の場合、入れる回数を重ねると色や味が薄くなるイメージがありましたが、固形茶では、一煎目の色が一番薄く、だんだんと色が濃くなっていきました。
味わいも徐々に癖が少なくなり、飲みやすく感じました。また、飲み終わった直後は、体がポカポカと温まるのを実感しました。
皆さんにも、実際に体験をしてみてほしいと思います。
4.参加者にインタビュー
Q.なぜ今回、企画展「固形茶からみるお茶の世界」に参加したのですか?
A.静岡といえばお茶ですが、固形茶は飲んだことがなく、興味を持ったからです。ギャラリートークで展示を案内してもらえるということも理由の一つです。
Q.実際、企画展に参加して、どのような感想を持ちましたか?
A.固形茶について今まで知らず、買ったこともなかったが、多様な展示を見て歴史や面白さを感じました。また、固形茶にするメリットは何だろうと考えさせられました。
柴本さん:固形茶にするメリットは、かつて茶馬交易の際、中国の茶産地から、遠方のチベットなどお茶の産地ではない地域へ運搬する時に「長期保存ができる」、「かさばらない」ことにありました。現在では、長期的に熟成させて、味や香りの変化を楽しめる点がメリットと考えられます。また、昔からの固形茶の伝統製法を守るという理由もあります。
また、企画展のギャラリートークの様子を見学しましたが、参加された皆さんが展示にくぎ付けになっている様子が、非常に印象に残りました。細部にまで工夫が凝らされた展示は、とても魅力的で、お茶の世界の奥深さや長い歴史を豊かに感じることができ、企画展の素晴らしさが、参加者の心に強く響いているように思いました。

5.まとめ
館内を見渡すと、子どもからご高齢の方まで幅広い年代の方々でにぎわっており、遠方からのお客様も多く訪れていることが分かりました。
「ふじのくに茶の都ミュージアム」の大きな特徴は、ただ展示を見るだけでなく、五感で堪能できる体験コーナーが多く設けられていることです。 中でも季節限定の「茶摘み体験」は、茶摘みをすること自体が珍しいこともあり、世代を問わず非常に人気を集めているそうです。
今回の企画展でも、単に見るだけでなく「体験」が重視されています。 会場内には、熟茶などの固形茶の香りを実際に嗅いで体験できるコーナーがあり、「果報は寝て待て」という言葉の通り、時間をかけて寝かせることで香りがまろやかに変化する奥深さを、自らの感覚で体感することができます。
世界で親しまれている「固形茶」の歴史や、長期間保存し、発酵・熟成させるという独自の文化を知ることで、私たちが普段当たり前のように飲んでいる静岡の「葉茶」の特徴がより鮮明に見えてきました。 鮮度を大切にし、茶葉本来の青々とした香りやうまみを引き出すことに特化した静岡の緑茶。一方で、過酷な環境での運搬や保存のために生み出され、時と共に味わいを深めていく固形茶。全く異なる進化を遂げた世界のお茶に触れることは、地元・静岡県のお茶文化の独自性や、その価値の再発見にも大きくつながります。

6.次回の企画展「文人茶と静岡県で活躍する煎茶流派」
現在、開催中の企画展「固形茶からみるお茶の世界」は、令和8年10月19日(月)まで開催されています。
その後、11月からは新たな企画展「文人茶と静岡県で活躍する煎茶流派」が開催される予定です。
企画展「文人茶と静岡県で活躍する煎茶流派」
開催日:令和8年11月7日(土)~令和9年2月15日(月)
<担当者からのコメント>
静岡県内には急須で煎茶を飲む文化が日常生活に広く浸透しているものの、その文化の背景や歴史的なルーツを深く知る機会は意外と少ないのが現状です。 そこで次回の企画展では、歴史的な資料の展示にとどまらず、実際に静岡県内で活躍している煎茶流派の煎茶道具も展示をする予定です。 普段から煎茶に親しんでいる愛好家の方だけでなく、お茶の歴史にあまりなじみのない方々にも足を運んでいただき、煎茶文化の歴史や魅力を知ってほしいです。


—-参考文献—–
企画展「固形茶からみる世界のお茶」
https://tea-museum.jp/event/20260718.html
企画展「固形茶からみる世界のお茶」ギャラリートーク\一部を映像で紹介します/
